850 hPa予想天気図 (FXJP854)

高層天気図の読み方

今回は850 hPa予想天気図の読み方を解説します.

850 hPaの高度と天気図としての役割

850 hPaは高度にして約1500 mになります.1500 mというのは,日本のほとんどの陸地から十分に離れた高度であるため陸の摩擦がなく,下層大気の代表値として扱われることが多いです.850 hPaにおける大気の状態を理解すると,もしその下層空気塊が上昇したら雨になりそう,問題なさそうといったことを判断をする材料の1つとなります.

天気図に書かれる情報

こちらが850 hPa予想天気図です.今回は例として2022/07/21 21:00に発表された12時間後の予想天気図,つまり2022/07/22 9:00の状態を予想した図を使用します.

この天気図に描かれる情報は2つです.

・等相当温位線

・風向風力の矢羽根

相当温位は3 Kごとに描かれ,15 Kごとに太線で描きます.風は,かなり細かい解像度で描かれるので下層大気の流れを理解するためには重要な情報源となっています.温位・相当温位については以下の記事で説明しておりますのでぜひご覧ください.

温位

温位 | ワンゲラーの天気図解析 (jediweatheranalysis.com)

相当温位

相当温位 | ワンゲラーの天気図解析 (jediweatheranalysis.com)

主な解析事項

低気圧・高気圧の中心解析

前述したように風の分布がかなり細かく描かれるため,高気圧や低気圧の中心を判別するにはもってこいです.風の循環の中心を見ることで判断できます.実際に下図でも,反時計回りの風の循環の中心が低気圧中心に対応していると考えられます.

前線解析

相当温位の分布と風の情報から前線解析を行うこともこの天気図で大事な作業になります.先の図には温暖前線と寒冷前線も書き込まれています.前線は,等相当温位線が密集している集中帯(図中で青塗りされた領域)の南縁に対応します.これは前線が,気団の性質が大きく変化する線(面)だからです.寒冷前線では狭い水平範囲で急激に空気の性質が変化するため,等相当温位線の集中帯が明瞭に解析されます(前線の断面図が理解できると想像できます.解説が必要であれなぜひお声がけください~).

温暖前線では集中帯が明瞭に表れる頻度は(初心者の私の感覚で)半々くらいで,風の分布だけで推定することもあります.実際にこの例でも風の分布だけで推定しています(下図).温暖前線の南側では南東~南西風,北側では南東~北東風になるため,風のシア(不連続線)に相当する位置に引いています.これは寒冷前線でも同じで,風のシアも意識して線を引いています.

上図では,相当温位が345 K以上になる領域を赤塗りしました.すると,寒冷前線や温暖前線を挟んではっきりと分かれています.345 Kは空気の性質が分かれる1つの目安として考えていて,345 Kを超えると空気は温暖湿潤であると言われています.この境界も前線解析のヒントにしています.ちなみに冬季は285 K以下の領域を青塗りし,寒冷乾燥空気の分布を追っています.寒気がどの程度南下してくるかを把握することが目的です.

空気塊の斜面上昇 (2023/10/27追記)

日本は海と山の距離が近いです. このため, 海から湿った空気が流れ込むと, 山の斜面を空気塊が登って雲が発達することが多々あります. その山域のどの方角に海があるのか意識すると, その方角から風が吹いた時雲が発生しやすくなると予想できます. 例えばこの時刻では, 南アルプスや丹沢に向かって太平洋から風が吹いています. 元々温暖湿潤空気に覆われているため雨が降りやすい環境ではりますが, 南西斜面を空気が登って上昇流が促進されると予想できます.

まとめ

850 hPa予想天気図は下層大気の状態と流れを把握するための情報が書かれています.ここから,高気圧や低気圧の位置や大気の流れ,そして前線解析を行うことで下層の状態を理解しています.また, 各山域と海の位置関係を把握することで斜面上昇による雲の発達を予想できます.

本投稿は気象庁「数値予報天気図」を加工して作成しています。

気象庁 Japan Meteorological Agency (jma.go.jp)

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