上昇気流 4つの発生要因

天気図に登場する用語集

頻繁に登場する「上昇気流」や「上昇流」の言葉。上昇気流が発生する場所では雲が成長しやすく、雨や雪となる可能性が高まります。ここでは上昇気流が発生しやすい条件を整理します。

低気圧の中心付近

これは、多くの人が想像できるのではないでしょうか。水が高いところから低いところへ流れるように、空気は低気圧に向かって集まります。低気圧は谷底の最も深いところにあたるので、空気が集まると水平方向に逃げ場を失って垂直方向に逃げていきます。これが上昇気流です。そのため低気圧では上昇気流となります。

風のシア(収束帯)

風のシアとは、図中に赤線で示したような風向が急激に変化する領域のことです。低気圧ほどではありませんがここでも空気が集まって、逃げ場を失って垂直方向に逃げていきます。天気図では各種の前線として現れます。例えば、こちらは2023/06/18 09:00の850 hPa予想天気図です。風のシアが停滞前線に対応しました。

次の図は、2023/12/20 09:00の850 hPa予想図になります。特に冬にはJPCZ (日本海寒帯気団収束帯)として現れます。JPCZは、朝鮮半島の根本の長白山脈という山脈で大気下層の季節風が分岐させられて、日本海で再度合流する際に形成されます。一定の、北西の季節風が吹くと形成されやすいです。以上から、風のシアを見つけることも天気の悪化を予見するヒントになります。

山の斜面

山の気象を考える上で、これは外せない要素です。日本は四方を海に囲まれていて、湿った空気が流れ込みやすい国です。各山域のどの方角に海があるかを意識すると、山の斜面上昇による雲の発生を予想できます。例として谷川連峰を考えましょう。

谷川連峰では主に日本海から湿った空気が流入します。風向が北~西のときは日本海から風が吹きますが、実際には西よりの風のときは天候はあまり悪化しません。なぜなら、谷川連峰の西側には妙高山や北アルプス北部の山域があって、空気は妙高や北アで上昇し、雨や雪を降らせてから谷川にやってきて、その時点では空気はだいぶ乾燥していることが多いです。

以上から、谷川では北~北西の風が吹くときに雨や雪となりやすいです。このように、その山域のどの方角に海があるか、また、海とその山域の間に山岳地形があるかによって、その山域で斜面上昇による雲が発生しやすい方角が分かります。

自然対流

標準的な大気の気温減率は、0.6℃ /100 mと言われています。そもそも、高度が高い場所にある空気ほど温度が低い理由は空気の密度の変化にあります。体積一定の空気塊を考えます。この空気塊が何らかの理由で上昇すると、気圧がより低い領域に入ることになります。体積が一定の空気塊を考えるので、気圧が低くなると空気分子の間隔は開いて、密度は小さくなります。密度が小さくなると、空気分子同士が衝突する確率も小さくなるので、温度の上昇も小さくなる、ということです。さて、話を戻しましょう。一般には、その空気塊が上昇するか留まるかは温位によって考えます。温位の解説ページもありますのでぜひご覧ください。ここでは、天気図からどう読み取るかについて解説します。基本的には、気温減率が標準大気と比べて大きいか小さいかで判断しています。大きいときは大気下層に温かい空気が溜まっていて(大気上層に冷たい空気が溜まっていて)不安定な状態です。気温減率の推定には850 hPaの温度と、500 hPaの温度と高度の情報を使います。気温減率は、

((850 hPaの気温) – (500 hPaの気温)) / ((850 hPaの高度) – (500 hPaの高度))

で表します。数値予報天気図では850 hpaの高度を取得できないので、1500 mと仮定して計算しています。例として2024/01/24 09:00の南アにおける気温減率を考えてみましょう。

左図が850 hPa、右図が500 hPaです。850 hpaでは-9℃、500 hPaで-36℃と予想しています。500 hPaの高度は5220 mでした。計算すると、気温減率は 0.73℃ /100 mとなりました。850 hPaの高度を1500 mと仮定しているので定量的な値は異なりますが、定性的な傾向は読み取れると判断しています。今回は、標準的な大気の気温減率 (0.6℃ /100 m)よりも大きいため、大気が不安定な状態にあると言えます。この日は上空に寒気が流入していて、大気下層と中層の気温差が大きくなりました。

12時間単位の数値予報天気図では読み取ることができませんが、夏場では日射によって地上付近の空気が温められて一時的に気温減率が大きくなり、対流が起こり積乱雲が発達して夕立になることがあります。このように、大気下層と中層の気温差によって対流が発生 (=上昇気流と下降気流が発生)することで雲の発達につながることもあります。

国土地理院地図 GSI Maps

http://maps.gsi.go.jp

気象庁 数値予報天気図

気象庁 Japan Meteorological Agency (jma.go.jp)

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