500 hPa予想天気図 (FXFE502)

高層天気図の読み方

今回は500 hPa予想天気図の読み方の解説をします.

500 hPaの高度と天気図としての役割

500 hPaは高度にして約5500 mになります.気象現象のほとんどが起こるのは高度0~11 km (気圧約1000~200 hPa)ですから,ちょうど中間の高度にあたります.500 hPa天気図はその日のおおまかな傾向をよく表現すると言われ,気象予報士はこの気圧面の情報を重宝するようです.その「おおまかな傾向」を表すのがトラフとリッジで,今回この2つについても説明していきます.

天気図に描かれる情報

今回は例として2022/08/15 21:00に発表された12時間後の予想天気図,つまり2022/08/16 9:00の予想を見ていきます.この天気図に描かれる情報は2つです.

・渦度

・等高度線

渦度は,負の領域が網掛けされます.等高度線は60 mごとに引かれ,300 mごとに太線になります.渦度についての説明は以下をご覧ください.

渦度・偏西風

渦度・偏西風 | ワンゲラーの天気図解析 (jediweatheranalysis.com)

主な解析事項

偏西風(渦度0線)

前項の図では,負の渦度域を青塗りした状態になっています.正の渦度域は白抜きのままです.「渦度・偏西風」でも説明していますが,渦度の分布から偏西風の中心軸を推定できます.今回の予想図では,華北~日本海~北海道~アリューシャン列島にかけて正の渦度と負の渦度の境界がはっきりしているのがわかるでしょうか.この境界に沿って線を引いていくと,下図のようになります.

このように,渦度の正負の境界 (=渦度0)を結んで引いた線を渦度0線と呼び,これが偏西風に対応すると言われています.

トラフ・リッジ

偏西風は北へ暖気を,南へ寒気を運ぶ役割を担います.そのため,中緯度帯を蛇行しながら進みます.これを図式化すると以下のようになります.

偏西風が南に凸になると,低気圧性の循環が発生しやすくなります.反対に北に凸になると,高気圧性の循環が発生しやすくなります.そして,この南に凸になる中心線を結んだものをトラフ (気圧の谷),北に凸になるものをリッジ (気圧の尾根)と呼んでいます.ニュースなどでよく聞く「上空の気圧の谷」はとトラフを指していることが多いです.南に凸となるところの前面では低気圧性循環に伴い上昇気流が発生しやすくなるため,天候は悪化しやすい状態となります.これを今回の例で解析すると以下のようになります.

トラフ・リッジと渦度との対応を見ると,トラフの周辺では負渦度 (つまり上昇気流),リッジの周辺では正渦度 (つまり下降気流)が卓越していることが読み取れます.トラフを解析するときの注意点が3点あります.

・等高度線が南に凸になっていて,最も曲率が大きいところに引く.

・渦度の極大値をつなぐことを意識する.

・トラフの末端が偏西風の強風軸を越えないようにする.

今回の例で言えば,トラフは日本海に位置するため,その前面にあたる日本列島では天候の傾向としてはよろしくない,と言えます.実際同じ時刻の地上天気図を見てみると,下図のようになっています.

青塗りされている領域が前日21:00~当日9:00までに降水が予想される地域にあたります.トラフの前面の広い範囲で雨が降ることが分かります.また,トラフに対応するように地上の寒冷前線が予想されていることから,トラフの前面では上昇気流になりやすい,ということもご理解頂けるかと思います.

まとめ

500 hPa予想天気図では偏西風とトラフ・リッジを解析することができます.ここから,その日の天気のおおまかな傾向を予想することができるため,重宝される気圧面です.

本投稿は気象庁「数値予報天気図」を加工して作成しています。

気象庁 Japan Meteorological Agency (jma.go.jp)

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