冬型の気圧配置が緩み、南岸低気圧と日本海低気圧が進む。
地上(等圧線・前12時間降水量)
南岸低気圧はこの天気図ではまだ低気圧として解析されていなかった。しかし、高層の様子から低気圧と、そこから寒冷前線と温暖前線を解析した。寒冷前線に沿って降雨域が分布する。また、よく見ると風の分布も、寒冷前線の前後で風向が変化している。日本海に進む低気圧にも前線を解析した。これは、後述する通り大気高層にトラフがあること、大気下層~中層でも空気の性質の違いが認められたことが理由である。
850 hPa(等相当温位線・風)
相当温位の分布を見れば低気圧が発生することは一目瞭然である。赤線で強調したように、相対的に暖湿な空気が北へ流入している(等相当温位線が北に凸)。それにより寒冷乾燥空気である285 K以下の領域は北へ押し上げられる。日本海の低気圧に注目すると285 Kの等相当温位線が寒冷前線に対応すると考えられる。南岸低気圧では低気圧循環の風は不明瞭であるが、等相当温位線が集中する領域があり、前線の存在を示唆する。
850 hPa(等温線)&700 hPa(鉛直p速度)
引き続き前線の位置の推定に注目していく。日本海の低気圧では上昇気流(青塗り)と下降気流(色塗りなし)の境界が寒冷前線に対応すると言える。これがちょうど850 hPaの相当温位285 Kに伴う寒冷前線の位置と対応する。推定される寒冷前線より西側では寒気が南へ流入している(等温線が南に凸)ことも根拠の1つである。南岸低気圧でも同様に、明瞭な上昇流域を参考に前線を解析する。次の湿数分布と合わせて推定を進める。
700 hPa(湿数)&500 hPa(等温線)
日本海の低気圧では推定した位置より東側で湿潤域(青塗り)となるので、先程までの議論と整合性が取れる。南岸低気圧は、先の上昇気流と湿潤域とを合わせて推定する。私は湿潤域(青塗り)の分布を優先度高く扱っている(空気の性質の違いをより明確に表現するため)。等温線の分布から確認できることは、日本海の低気圧では500 hPaでも暖気・寒気の弱い移流が認められるが、南岸低気圧では認められないことである。これは次の、大気高層のトラフと関係する。
300 hPa(等高度線・等風速線)
日本海の低気圧は寒冷前線ジェットの蛇行に伴うトラフに対応していると考えている。それに対して南岸低気圧では対応するトラフが見当たらない(亜熱帯ジェットの蛇行はほとんどない)。そのため、日本海の低気圧のほうがより高い高度まで成長できると考えている。
以上の根拠を以って両低気圧に前線を解析している。
本投稿は気象庁「数値予報天気図」を加工して作成しています。
気象庁 Japan Meteorological Agency (jma.go.jp)
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