フィールドの「地形」と「風」をリンクさせよう:データから波を読み解く

Marine

ボートを打ち付けた鋭い波

Marine J
Marine J

さあ、今日も楽しく潜るぞ~。朝から風が強かったけど、お昼になってだんだん落ち着いてきたから出航できるかな?

J
J

いってらっしゃ~い

ところが、港を出ると周期の短い切り立った波が待ち構えていた。船首を波が叩いて、飛沫が舞った。

Marine J
Marine J

波が立ってボードが揺れる。。。!今日は撤退か。。。

なぜ波が立つような海象となったのか?

2026年3月14日の熊本県天草市牛深町。残念ながら狙ったポイントのダイブはできなかった。当時の天気図を振り返ると次のような状態だった。

2026/3/13 09:00実況天気図
2026/3/14 12:00実況天気図

九州地方では南海上を低気圧が通過し、東シナ海を進む高気圧の縁を回るような北東風が卓越していた。

J
J

アメダスを見ると、未明は落ち着いていたけど、朝になって以降はずっと北東風が卓越していたね。しかも平均風速は5m/s程度と言えそうだ。9時には最大風速11.8m/sを記録。日中は風が水面をたたき続けていたと言えるだろう。

Marine J
Marine J

今回は東側のポイントを目指したけど、北東方面はまさに長島海峡への風の抜け道になっているのか。。。

J
J

そうなんだ。だから波は発達しやすい環境だったわけだ。

風浪のメカニズム

平易に記述すれば、風浪は

  • 風速:波を立たせるエネルギー。
  • 吹走距離:どれくらいの距離を一定の風が吹くか。
  • 吹続時間:その風がどれくらい吹き続けるか。

によって考えることができる。風が弱い状態でも、長く吹き続ければ波は発達するし、風が強くても局所的でしかなければ、波は遠方までは発達しないと理解できる。風域が一定(風速と吹走距離と吹続時間が一定)の場合の有義波の波高および波の周期を推定方法としてSMB法(コラムで説明)がある。今回の牛深での波の条件を次の仮定により計算した。

  • 未明に一度風向がリセットされているため、7時~13時(出航時刻)の直前まで、一定の風が吹き続けたとする(吹続時間=6時間)。
  • 当該時間の牛深アメダスでの平均風速は4.5 m/sとなった。海上では、陸上の1.5-2倍の風速が観測されるとの経験則から、風速=8 m/sとする。
  • 風向は北東。先の地図から吹走距離=30 kmとする。

左記の条件でSMB法により推定すると次のようになった。

波高=0.75 m / 周期=3.3 s

J
J

波高が高くなくても、周期が3秒台の波は船首をたたくような、しぶきを上げる波だ。当日の感覚と一致していそうだ。

さらに今回の場合は、前日に一日中北東風が卓越したため、波のエネルギーが残っていたと想像される。計算した数値以上に波を感じていた可能性が高い。仮に吹走時間が24時間とすればそれだけで波高は1.5 m近くまで上がる。

今回の教訓

J
J

海は風に対して遅れて反応するんだ。山と同じで風の通り道を意識することでそのエリアが荒れやすいか分かってくると思うよ。

Marine J
Marine J

そうだね。これも山と同じで、過去の気象条件までさかのぼるのが大事だね。

Special thanks

ブルーアース21 くまもと

当日はその後ポイントを変えて、沖に出ずに風を避けられる西側で潜りました。ウミウシたちを撮りました(水中カメラ初心者のため勘弁)。

さらに深く学びたい方へ[SMB法]

水面が静穏で移動がない状態のときに、風条件を与えた場合の有義波を推定する方法である。①風速が一定の場合②風速が時間的に変化する場合の2つの場合における風浪の波高と周期を推定できる。

高橋洋雄 作成

A: 風速と吹走距離 / B: 風速と吹続距離 それぞれの交わるところを読み取り、小さいほうを採用する。

今回は、時間的変化がない場合を仮定して計算する。また、八代海全域で北東風が吹き抜けていたと仮定する。数100km~数1000km単位で台風の風による波の伝搬を推測するときなど、より広域での解析となると、風域の特定が必要となる(今回は割愛)。条件を再掲すると、風速=8 m/s, 吹走距離=30 km, 吹続時間=6 時間であった。

吹走距離で推定したほうが値が小さいので、波高0.75 m, 周期3.3 sを採用する。

参考資料

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