今回は、高層天気図の頻出用語であるトラフとリッジについて説明します。
トラフとリッジはジェットの蛇行によるもの
トラフとリッジは、ジェットが蛇行するために出現します。ジェットは、熱帯と寒帯の温度差を解消するために吹きます。そのとき、北へ暖かい空気を、南へ冷たい空気を送るために蛇行して吹きます。
北に蛇行するとき、ジェットの軌跡は北に凸になります。このとき、風の循環は高気圧性循環と同じ向きになります。逆に南に蛇行するときはジェットの軌跡は南に凸になり、風の循環は低気圧性循環と同じ向きです。それぞれの、最も曲率が大きくなるところがそれぞれリッジ・トラフになります(今はジェットの軌跡を1本しか書いていませんが、実際には南北に幅があります。天気図では等風速線や等高度線で判断するため、それらの曲率が大きいところを結びます)。
トラフ・リッジの解析から天気の傾向を予想できる
トラフの例
トラフは、低気圧性循環が卓越する領域です。そのため、トラフが接近すると天気の傾向は悪くなります。下図は2023/01/05 21:00に発表された、2023/01/06 21:00の300 hPa予想天気図です。等高度線と等風速線が描かれています。
日本付近には亜熱帯ジェットと寒帯前線ジェットが吹きます。寒帯前線ジェットはときに北系と南系に分離します。色分けはそれぞれ風速が、80 KT以上:緑、120 KT以上: 青、160 KT以上: 赤の領域です。トラフとリッジが緑線で、そのトラフに伴う300 hPaの低気圧中心が赤✕で示されています。この時刻の予想図では、朝鮮半島付近のトラフが日本に接近しています。同じ時刻の地上天気図を見てましょう。
朝鮮半島に低気圧が発生しています。緑で塗られた範囲は前12時間(今回なら6日9:00~21:00)に降水が予想される領域です。時刻が進むと、トラフと共に低気圧が日本海を進み、雨もしくは雪をもたらすことが予想できます。このように、トラフ付近、特に前面では低気圧が発生しやすく、天気の傾向は悪くなります。
リッジの例
リッジは、高気圧性循環が卓越する領域です。そのためリッジが接近すると天気の傾向は良くなります。下図は2023/01/10 21:00に発表された、2023/01/11 21:00の300 hPa予想天気図です。
要素の示し方は先と同じです。こちらでは沿海州にリッジが進んでいます。同じ時刻の地上天気図を見てみましょう。
日本の広い範囲が高気圧に覆われています。このように、リッジの前面では高気圧に覆われやすく、天気の傾向は良くなると言えます。
まとめ
トラフとリッジを解析することで、その日の天気のおおまかな傾向を掴むことができます。そのため、これらの解析は必須項目になっています。
本投稿は気象庁「数値予報天気図」を加工して作成しています。
気象庁 Japan Meteorological Agency (jma.go.jp)
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